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第3話「ボーカロイドの集い・カラオケ大会」(5)

ミクに促されてついてくることどれくらいの時間が流れたか、校舎の隅っこ、行き止まりでミクは足を止める。

後ろをついたリンも、動きを止めてミクの動向を見守った。

「リンはさ、決勝でLilyに勝ちたい?」

リンに背を向けたまま。口火を切ったのはミクのほうだ。

「当たり前じゃん。勝ちたいよ。アイツにだけは負けたくない」

リンはややシケた語調だが「勝ちたい」……その言葉だけは強調していた。

「勝ちたい、か。何のために勝ちたいの?」

「そりゃ、優勝して賞金と牛肉を持ちかえって……」

「それは、半分は本当で半分は嘘だ」

リンの言葉を遮って、ミクは振り返り、ビシッと指差して宣告する。

いつもの気だるげなミクの声ではあるが、心の底まで見通したかのような、鋭い発言。リンは胸の奥を鷲づかみにされたかのようになって、無意識のままに後ずさっていた。

「リンの負けず嫌いっぷりは私なりによく知ってるつもりだしね。それに、Lilyとリンとは、レンを巡る恋敵……勝ちたい競争心が燻るのは私なりにもわかるよ」

ミクは一呼吸置いて、

「リン、私たちボーカロイドは何のために歌うか、考えたことってある?」

「マスターが世の中に発信したい音楽を代弁して歌うのがアタシたちボーカロイドじゃないの?」

リンは即答した。ミクは「なるほど」と前置いて、言葉を紡ぐ。

「そうだね。それ自体は真理だと思うよ。でもリン、今のアンタは勝敗とかいろんなことに左右されすぎてその歌を見失ってる。準決勝のリンの歌、良かったけどなんだか違う感じがしたんだよね。正直、あれだと決勝でLilyに負けるよ。Lilyはいつも真っ直ぐに前を見てストレートに歌をぶつけるからね」

「ミク姉、アタシ、どうしたらLilyに勝てる?」

「思いっきりぶつかればいいと思う。嘘偽りないリンの声で、気持ちで、歌えばいいと思うよ。勝てるかどうかはさておいて、ね」

ミクはまるで諭すように、少しばかり声色を和らげた。

「そういえばさ、リン。ちょっと前までの収録、意気込んでたよね。あの収録をやり始める手前で私に言ったこと、覚えてる?」

「あ……」と、リンが何か言うより早く、ミクは隣をすり抜けて来た道を引き返していく。

「ネタばらししてあげる。決勝はがくぽといろは姐さんと私の3人で、どっちの歌のが良かったかを判断するようになってるんだよ。私は身内贔屓でリンを勝たせるようなセコい真似は絶対しないし、審判は公平にやるから。だから、贔屓なしで私や皆を揺さぶるような歌を思い切りぶつけておいで。リンの精一杯の歌をね」

背を向けたまま、遠ざかっていくミクが優しげに投げかける。

柄にもなくお姉さんぶったミクの言葉に捉われて、勝敗の決し方が変わることなど、リンの中で然程驚くことでもなくなっていた。

――収録をやり始める手前に言ったこと。

「何のために歌うか、か……」

改めて、ミクから提起された質問を想起する。

成長したリンの声で録ってみたい、とはそのときのマスターからの要望だった。要望に応えて臨機応変なボーカルを提供するのはボーカロイドとしての役目だ。けれども、その収録した声を、作品をいち早く聴かせてやりたい相手がいた。

――思い出したよ、ミク姉。

マスターの発信したい音楽を代弁するのは、ボーカロイドとしての役目。だけどそれだけじゃなくて。

「やっぱりミク姉には敵わないなぁ……」

そう呟くも、彼女の姿は既にここにはない。

モヤのかかっていた気持ちが、清々しく晴れていく。

深呼吸する。

決勝でのLilyとのカード。大会最後の歌唱を前に、自らの気持ちを整理していく。

――嘘偽りない、気持ちで。

ミクから言われたことを、呪文のように、リンは何度も己に言い聞かせた。





挟んだ20分の休憩ののち、大会の残る最後のカードが再開された。

勝ち残ったのはAブロックのリンとCブロックのLilyの2名。

「えー、決勝戦はルールが少し違うでござる。リン殿とLily、2人の歌が終わってから、拙者、初音ミク殿、猫村いろは殿の3名で審査を行い、どちらを勝者にすべきか判定する。最初から最後まで機械採点というのも味気ないであろう? 拙者はLilyとは寝食共にする家族でござるが、このときばかりは身内贔屓という真似はしないし、それはリン殿の姉にあたるミク殿も同じ気持ちのはずでござる」

がくぽの提示した新たな勝敗の裁決方法に少しばかり会場がどよめいたものの、程なくして一帯は落ち着きを取り戻す。

「正直、これまでの2人の歌唱を聴いてきたところ、どちらが勝ってもおかしくないものでござるし、決勝に相応しい組み合わせとなったといっても過言ではないでござる」

と、がくぽは前置いて、

「さて、拙者の話はこのくらいにしておいて、そろそろ歌のお披露目といきたいところだが、まずはリン殿、いるでござるか?」

マイク片手に発せられる、芯の強いがくぽの声は会場一帯に轟いてリンの耳にも届きそうなものだが、当のリンは10秒経っても現れる気配がなかった。

「おかしいでござるな。リン殿、いたら拙者のいる舞台にまで来るでござる」

繰り返すものの、やはりリンの姿はない。アクシデントともいえる事態に、会場がザワついた。「ここにきてまさかの辞退?」「いや、トイレに行ってるだけじゃ?」「決勝どうなるの?」「Lilyの不戦勝?」などといった戸惑いの声が入り混じる中で、

「えー、ご静粛に。リン殿が現れぬなら、先にLilyから始めるとしよう。Lily、舞台まで来るでござるよ」

呼び掛けられて颯爽と姿を現したLilyに、観客が沸く。

「リンー! ここまで勝ち上がっておいて、もし来なかったら承知しないわよ!」

と、Lilyががくぽのマイクをぶんどって高らかに叫べば、舞台下からはドッと笑いが出た。僅かばかりザワついていた場内が巧い具合に和む。

「あのー、Lily、マイクを返すでござる。っていうか、歌唱用のマイクを使えでござる」

がくぽの訴えは無視された。

「そりゃー、このままだとあたしの不戦勝になってお肉もお金もいただきかもだけど、そんな形で優勝なんて納得いかないからねー! もし来なかったら末代まで恨むわよー!」

意気揚々と宣言したLilyが、デンモクに手早く選曲リクエストを送って、ぶんどったマイクをがくぽに投げ返す。がくぽが片手で受け取りながら、

「まったく、物は大事にするでござる」

と、ブツクサ文句を言う傍らで、決勝の舞台が幕を開ける。

演奏がはじまり、マイク片手に熱唱をはじめるLilyの姿に聴衆たちがスタンディングオベーションを送る。

歌う曲は、アニメの主題歌としても知られるトランス調のロックナンバー。パワフルな歌声を持つLilyに映える至高の一曲だった。

最高潮の盛り上がりを見せる観客の中、体育館の隅っこで地に足つかぬ様子で佇む人物の姿がある。

「リンの奴、なにやってるんだよ。せっかく決勝まで勝ち上がれたのにみすみす勝負を放棄するってのか?」

レンだった。同じ鏡音の名を冠するボーカロイドの片割れが、時間になっても来ない様子に気が気でなくなっていた。

第二回戦や準決勝の時には姿があったのに、何があったか今やどこを見回しても見当たらない。舞台に降りてきたところをミクに連れて行かれるのをレンも目撃してはいたので、その辺をミクに問い質してみたものの「来ると思うんだけどねぇ」の一点張りだった。

「彼女さんが来ないので気が気でないってか」

「ちがうって、オレとリンはそういうんじゃ……」

隣で腕を組んで立っていたヒオに茶化されて、レンは少々声を荒げた。

「まあ、何かあったんだろ。少なくともリンちゃんは逃げるような奴には見えねーよ。信じて待っててやれって」

「姉さまとゆかりさんと同じで、レンさんもリンさんのこと大好きですから」

レンの肩をバシバシと叩くヒオのさらに隣で、妹ルカが微笑んだ。

「だろ? だろ? 傍から見りゃそうにしか見えないんだよなコイツら。いやー、ルカちゃん小さいのによくわかってるねぇ」

「小さくないです!」

笑顔から一転して抗議する妹ルカと、それをケラケラ笑いながらかわすヒオを傍目に、レンはいないと知りつつも館内を見渡して、しきりにリンの姿を探し求める。

だがどんなに探しても見当たらず。時間ばかりが刻々と過ぎていき、Lilyの歌も間もなくクライマックスに差し掛かろうとしていく。
曲が終わりに近づいていくほど、不安は大きくなっていくばかりだ。もしかすると、何か事件に巻き込まれたんじゃ……という想いすらよぎる。

「リンちゃん来ないね。何かあったのかな?」

少し離れたところで突っ立っていたピコが、レンのほうへ歩み寄りながら、その不安を代弁するかの如く呟いた。

「わからない。もうLily姉の歌が終わってしまうってのに」

結局、舞台上のLilyが熱唱を終えたところでリンが館内に姿を現す様子はなかった。

「お疲れさんでござる、Lily。さて次はいよいよリン殿でござるが……やはり姿が見えぬでござるな……この分だとLilyの不戦勝に……」

と、司会進行するがくぽが言いかけたその刹那、

「ちょっと待ったぁっ!!」

それを遮るように、甲高い声が館内一体に響き渡る。

どよめく会場内へ、つかつかと速足で駆け込む人物一人。

「アンタは……」

すぐ隣をすり抜けて行く彼女の姿に、レンは見覚えがあった。声はリンと似ているが、背が高くて髪も長い。

目が合って、一瞬だが彼女は舌を出してはにかむように笑んでみせた。

「誰が不戦勝だって誰が? まだ歌ってないでしょうに」

しなやかな動作で決勝の舞台へと舞い上がる人物の姿に、ざわめくギャラリー一同。

「おい、レン。誰だあの美人は」

ヒオが目を丸くして、舞台上を指した。しかしレンは答えない、答えられない。どうしてあの人が、という疑問が膨れ上がって、それどころではなかった。

「ちょっと、あんた、誰だか知らないけど、歌うのはリンのはずでしょ。代役出場なんてセコい真似するなんて、絶対に許せないわよ!」

先に舞台に上がり、おまけにトリを務めることになるはずだったのに、リンが出てこなかったことで、前倒しで歌うことになったLilyが喰ってかかる。

だが、そんなLilyに対する彼女の回答は至って冷ややかで、会場及びレンに激震を与えることになる。

「Lily姉、その心配は要らないから。なぜなら、アタシがリンだから」

「へ……今、なんて?」

「だから、アタシがリンだって言ってるの。こんなカッコしてるけど、鏡音リン。ドゥーユーアンダスタン? 文句ある?」

体育館での講壇上という大舞台での大暴露。

「お、おいおいマジかよ……? あれがリンちゃんってか? 何があったか知らないが美人すぎだろおい!」

ヒオの言葉を皮切りに、観客席がガヤガヤと騒がしくなる。「嘘でしょ!?」「確かに面影はあるしそう言われると……」「かわいい」など、思い思いの感想があがる中、なにより衝撃を受けていたのは他ならぬレンだ。

「う、嘘だろ……?」

口をついて出る一言。

彼女の言うことが真実であるならば、これまでリンの姉と自称していた彼女との出来事は、全てその実、リンとの間に起きていたことということになる。

しかし信じられないという気持ちの反面、それならばいろいろと納得だっていく処もある。彼女がミクやレンたちの家で時折現れて収録の場を借りていたこと、校舎の屋上で出会い、別れた直後に『リン』としてヒオたちと遭遇していたという話も、辻褄が合ってくる。

それなら、屋上で交わした口付けは?

『こういうのって、好きな人にしなくちゃダメだったからね』

頭を鈍器で殴られたかのような衝撃がレンを伝う。胸が高鳴って、熱い。

「えー、静粛に、静粛に」

マイク片手に握る主催者がくぽの一声により、どよめいた場内はひとまず静寂を取り戻す。

「えーと、リン殿で、いいのかな? それはどういうことか、説明を願いたいでござる」

「簡単なことだよ。お馴染みの鏡音リンが成長した姿だもん、これ」

リンは即答した。だがこれでは簡単すぎて聴衆もがくぽも理解できなかったらしい。

「うーむ、仰る意味がわかりかねるが……」

がくぽを筆頭に、再びざわめき立つ場内だが、それを制止する声があった。

「それについてはウチが説明したるわ。ちょっと舞台まで失礼すんで」

独特の関西弁を引っ提げて速足で舞台に上がってきたのは、猫村いろはだった。彼女は中央の演台に置かれた歌唱用のマイクを片手に、

「ボーカロイドの中には、魔法少女やないが本来の設定年齢とは違う姿に変身できる奴がおるんや。本来持ち得る声質や姿を変えてイメージチェンジを図るってのがまあ大体の目的やけどな」

彼女はリンのほうを見やり、

「そういうことやろ、リン。ウチの説明は間違うてないか?」

「ありがと、いろは姐さん」

礼を述べたリンに向かって、無邪気に笑んで、いろははそそくさと舞台から降りる。

この世界でのボーカロイドの中では、抜群の信頼と存在感を持ち、さらに発言権の強い猫村いろはだ。彼女の意見は鶴の一声の如く。手短ではあったがギャラリーを納得させるには十分だった。

もちろんそれはレンとて例外ではない。いろはの説明を受けて、彼女が確かにリンであるという意識を強めるばかりだ。

「さて、選曲しないといけないんだよね。歌うのはもう決めてるんだけど」

レンをはじめとしてギャラリーたちに構わずに、デンモクを弄り出すリン。

「リン殿、この決勝のルールでござるが……」

「わかってる。3人の審査員でどっちのが良かったかを判定するんでしょ。言っておくけど、負けてやる気は毛頭ないからね」
その姿はまさしく意気揚々としていて、自信に充ち溢れている様子だった。

――やっぱり、リンだ。

同じ鏡音のコンビとして接してきたレンには、自信に満ちた言動が、いつもの彼女と重なって見えた。姿は違えど面影はあるし、この状況でいつものリンなら言いそうなものだ。





成長した姿で舞台に立ったリンの姿を、冷静に眺める人物の姿がある。

舞台に最も近い場所に設けられた座席に居座って眺めるミクとルカの2名だった。

「吹っ切れたね、リン」

「アンタ、さっきリンに何を言ったの?」

「やー、忘れた。自分の言ったことなんていちいち覚えてるわけないじゃーん」

ミクはぶっきらぼうに耳をかっぽじって受け流す。

「でもま、これでリンの勝率が上がって肉を持ちかえってくれたら万々歳だよね。勝って帰ったら焼き肉しましょうワッショイ」

「働かざる者食うべからず。参加しなかったあんたに肉はなし!」

「酷過ぎ泣ける。最後の最後に審査員で頑張るのに……」

「嘘だってば。買ったらあんたも含めてパーティーよ」

がっくしとうなだれるミクの肩を、ルカが笑いながら叩いた。

舞台上のリンの選曲が済んだのか、スクリーンにPVが映し出され、曲が流れ出す。別れた相手との思い出を偲ぶ、少しレトロなスローバラードだった。

「これは……渋い選曲でくるね。ルカ姉かいろは姐さん向きの曲だと思うけど」

「まあ、いつものリンじゃお世辞にも向いてると言いにくい曲ではあるわね」

ミクやルカがそう言うのも、歌詞を通じて主軸に描かれているのが成人女性というのもあるためだ。どちらかといえば甘酸っぱい恋の歌を担うイメージを強く持たれる鏡音リンには対照的とも言える。

イントロが終わり、リンが歌い出すと、会場が大きな歓声に沸いた。従来のリンとは大きく違った、大人びた歌声も観客を沸かせる要因なのだろう。

「静かな曲だけに、ごまかしが利かないっていうのに、リン、あの子……こんな歌い方できたのね」

ルカは感嘆のあまり息を呑んだ。その間にも歌は進んでいく。

『吹っ切れた』リンの歌はトリに相応しいものだった。ライバルのLilyですらもが、固唾を飲んで見守るばかりだ。

「これは決まったね」

ミクが目を伏せ気味にして呟いた。

会場一円が渦を巻くような大声援に包まれる。気がつけば全員がスタンディングオベーションしていた。ルカもまた「頑張れー!」と大きく激励を送る。

クライマックスに入っても、リンの歌唱は衰えるばかりか、ますます熱がこもっているようだった。準決勝で飛ばしてバテるのではといういろはの心配は杞憂に終わりそうだ。

やがてトリを飾るリンの最後の絶唱が終わり、彼女は大きく一礼する。今大会、最大の祝福に迎えられて。

「素晴らしい歌声でござった。主催者の拙者も、思わず言葉を失くして魅入っていたでござるよ」

がくぽがパチパチと手を叩きながらコメントする。

「そうね。すごくよかったわ、リン。当初の予定通りあたしがトリを飾れなかったのは少し悔しいけど、でもあんたがあんな素敵な声で歌ってくれたんなら、文句もないわ」

と、続けて賛辞のコメントを寄せたのはリンが敵視していたLilyだった。それまで衝突ばかり繰り返していた相手から素直に褒められて、リンは少しばかり素っ頓狂な声をあげたが、すぐに微笑んでLilyに会釈してみせた。

「えー、では早速だがミク殿、いろは殿。勝者の判定に協力を願いたい」

呼び掛けられたミク、いろはの両者は舞台へと集合し、がくぽの隣に立った。

「リンやな」

「身内贔屓をする気は一切ないけど、リンに一票」

即答した2名に続き、がくぽもきっぱりと告げる。

「Lilyには済まぬが、拙者もリン殿に一票でござる。よって三者一致でリン殿の優勝でござる。優勝賞金一万円と、牛肉詰め合わせはリン殿に進呈するでござるよ」

優勝者の決定に、再び会場に拍手と歓声の旋風が起こる。

「あたしの完敗よ。おめでと、リン」

Lilyは少しだけ悔しそうに、しかし顔には笑みを湛えて拍手した。その潔い態度が場をさらに盛り上げた。

「Lily、なかなかニクイですわね」

「アンタもあんな感じに潔く負けを認めれば少しは恰好がつくのにね」

不意に話しかけてくるゆかりに痛烈な皮肉を返しながら、ルカは大歓声の中で大会の結末を見守っていた。

「リンちゃんの歌、よかったですわね」

「ええ、そうね」

しかしゆかりは挑発には乗らずに素直に最後の戦いの感想を述べるだけだった。珍しくも柔和というか落ち着いた態度のゆかりに、ルカは内心軽く驚きながらも、彼女に感化されて汐らしくなる。

「彼女にしては大人しい歌を選びましたのね。てっきり、最後も激しい曲でくるものだとばかり思っておりましたが。それにしても、驚くべきはリンちゃんのあの姿……」

「私は知ってたけどね。マスターがあの姿のときのリンの声が好きだからって理由で、収録のときにしばしばやらせてたのよ。リンもあの姿、結構気に入ってるみたいだし」

「なぜ、今になってわざわざ姿を変えてきたのでしょうか?」

「ミクと私、そしてマスター以外にはあの姿を見せたことがないから、抵抗があったんじゃないかしら。決勝前に、何かミクに言われたのがやっぱり……」

当のミク自身は何を言ったのか覚えていないと投げやり気味にぶっ放していたが。やるべきところではしっかりと役目を果たしてくるミク所以に、普段のメチャクチャな行動も、ルカには根っから嫌いになれないところではあった。それだけに、肝心の彼女が「聴き専」に徹して出場しなかったことが少しばかり悔やまれる処だが。

「それにしても、この分だと後でレンとの間に少し悶着ありそうね」

「あら、レン君と何かあったのですか?」

「なんでもないわ、こちらの話」

正体を知らぬままに、逢瀬を重ねた2人だ。このまま平穏に終わるとは思えないが、遅かれ早かれ辿る道だ。

僅かばかり、鏡音の2人の先を案じながら、ルカは大会のクライマックスの熱狂に身を任せた。


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TM box及びSoundCloudで細々とカバーもどきな作品創らせてもらってます。アイコンはNaiさんにお願いして書き下ろしていただきました。

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